世界史情報局

世界の全史を自分なりに見渡してみようと思って始めたブログ。近代以前の世界史の中心だった東アジアと西アジアの視点から、なるべく手を広げながら通史を書いています。根も葉もない出鱈目は書かないけど、面白さ重視で描写の脚色もします。

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「漁師とおかみさん」、そして皇帝と教皇

グリム童話に「漁師とおかみさん」という話がある。

むかしあるところに貧しい漁師とその妻が暮らしていた。
ある日、漁師は海で、とんでもなく大きなヒラメを釣り上げる。ところが、そのヒラメがなんと口をきいた。自分は魔法にかけられた王子で、逃してもらえればどんな願い事でも叶えるという。

可哀想に思った漁師は何も願わずにヒラメを放してやり、手ぶらで家に帰った。
ところがそれを聞いた妻が怒る。

「あんたなんで、そんないい機会に何も願わずにヒラメを放しちゃったのよ! あほばかまぬけ! 家でもくれるように頼んでおいで!!」

しょうことなしに漁師は海辺にトテトテと歩いていき、ヒラメに呼びかけた。

「ヒラメさん、ヒラメさん、出てきておくれ。わしの女房のイルゼビルはわしが思うようにはならんのだ」

「どうしました、漁師さん」

「わしの女房は立派な家が欲しいというのだ」

「帰ってごらんなさい、願い通りになっていますよ」



・・・・・・これに味を占めた漁師の妻は、次から次にと新たな願いを持ち出して、夫を海辺へ追い立てる。

石の城が欲しい、王様の御殿が欲しい、王様よりも偉い皇帝の宮殿が欲しい、皇帝よりも偉い教皇の聖堂が欲しい・・・・・・漁師が妻に追い立てられてヒラメのところに陳情に行くたびに、海はどんどん暗く濁り恐ろし気に代わっていく。

そして最後に。

「そうだ、あたしの力でお日様を上り下りさせてみたいわね」

漁師は泡を食って海辺に駆けつけた。

「わ、わしの女房が神様になりたいと言い出したんじゃー!」

凄まじく荒れる海の中からヒラメは答えた。

「家にお帰りなさい。奥さんは元のボロ小屋に座っていますよ」


0_Basilique_Saint-Pierre_-_Rome_(1).jpg
(リアル教皇の聖堂)

まあ人間の欲というのは果てしないものでありました。


ところでこの物語のなかで、教皇が皇帝よりも偉いということになっているところが面白い。

中世ヨーロッパ世界には聖界と俗界という二つの秩序があって、それぞれのトップに君臨するのが教皇と皇帝だった。
このふたり、どっちが上なのかということを散々争い、それが中世ヨーロッパ史全体を貫くひとつのテーマになっている。
しかしまあ、叙任権闘争だのカノッサの屈辱だのギベリンとゲルフの争いだのといった華やかな歴史を余所に、民衆の実感としては「教皇さまは皇帝陛下より偉い」というイメージだったのだろうか。
たぶん教皇のほうが皇帝よりも、ドイツの一般民衆からは遠い存在だろうし。

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平清盛になればよかったのに。


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